財務分析 第1問 問13 在外支店の財務諸表項目に関する問題

在外支店の財務諸表項目の換算に関する記述のうち、正しくないものはどれですか。

  • 金銭債権債務には、取引発生時の為替レート(HR)が適用される。
  • 収益・費用はHRで換算されるが、期中平均為替レートによる換算も認められている。
  • 棚卸資産に低価法を適用して評価額を切りさげている場合、決算時の為替レートで換算する。
  • 換算によって生じた差額は、為替差損益として処理する。
  •    

解答

解答:A

  • 本店の換算基準と整合性をもたせるため、決算日レート(CR)が適用される。
  • 正しい。
  • 正しい。
  • 正しい。
  •    

代金決済時の会計処理

外貨建取引の会計処理については一取引基準と二取引基準があり、取引時から決済時までの為替相場の変動による差額(決済差額)をどう処理するかがことなる。
①一取引基準・・・外貨建取引とそれに伴う代金決済取引とを一連の取引とみて会計処理する方法。
②二取引基準・・・外貨建取引とそれに伴う代金決済取引とを個別の取引とみて会計処理する方法。

決算時の会計処理

決済日前に決算日がきた場合の為替相場変動による差額を処理する考え方は下記2つの方法がある。
①発生時レート法・・・取引発生時にその時点の為替相場(historical rate:HR)による円換算額を記録したあと、決済時までその価額を変更しない。
②決算時レート法・・・取引発生時にHRによる円換算額を記録したあと、決済日前に決算日が来た場合、決算時の為替相場(closein rate:CR)で換算し直す方法。

外貨建金銭債権債務は原則として二取引基準と決算時レート法を適用することになっている。

外貨建項目の換算方法

決算時の外貨建項目には「外貨建取引による外貨建項目」と「在外支店・在外子会社の財務諸表項目」とがある。
決算時の外貨建項目の換算方法は主に下記の4つの考え方がある。
①流動・非流動法・・・外貨建項目のうち流動項目は決算時の為替相場(CR)で換算、非流動項目は取引発生時の為替相場(HR)で換算する方法。
②貨幣・非貨幣法・・・通貨や金銭債権債務のような貨幣項目はCRで換算し、棚卸資産や有形固定資産のような非貨幣項目はHRで換算する方法。
③テンポラル法・・・取得原価で測定されている項目はHRで換算し、時価で測定されている項目はCRで換算する方法
④決算日レート法(カレント・レート法)・・・全て外貨建項目をCRで換算する方法。

企業が保有する外貨建項目の換算基準

外貨建項目換算基準
通貨CR
金銭債権債務CR
満期保有目的の債券外貨による取得原価または償却原価×CR
売買目的有価証券外貨による時価×CR
その他の有価証券外貨による時価×CR
子会社株式・関連会社株式取得原価×HR
強制評価減された有価証券外貨による時価または実質価額×CR

在外支店・在外子会社の財務諸表項目の換算

①本国主義・・・在外支店、在外子会社が本国の事業と不可分の関係にあったり、本国事業の延長であったりする場合、在外支店、在外子会社の取引をあたかも 本店ないし、親会社による外貨建取引とみて財務諸表項目を換算する考え方。
②現地主義・・・在外支店、在外子会社の事業が、本国事業から独立しており、現地の経済環境の下で自立しているとき、在外支店や、在外子会社の 現地通貨による事業成果と整合するように財務諸表項目を換算する考え方。
「外貨建取引等会計処理基準」では、在外支店の財務諸表項目は本国主義に基づいて換算され、在外子会社の財務諸表項目は現地主義に基づいて換算されることになっている。

在外支店の財務諸表項目の換算

①通貨、金銭債権債務、有価証券等・・・本店の換算基準に従って換算される。
②非貨幣項目・・・取得原価で記録されているものはHRで換算され、取得原価以外の価額で記録されているものはその価額が付されたときの為替レートで 換算される。棚卸資産について低価法を適用する場合や時価の下落により評価額を切り下げる場合、棚卸資産の外貨による時価または実質価額がCRで換算される。
③本店勘定・・・本支店合併財務諸表の作成にあたって、本店の貸借対照表における支店勘定と相殺される。
④収益・費用・・・原則として、本店と同じくHRで換算されるが、期中平均レートによる換算も認められている。
⑤換算差額・・・換算によって生じた差額は、為替差損益とする。
※低価法・・・資産の取得原価と時価とを比較し、いずれか低い方の価額を期末資産の評価額とする資産の評価基準であり低価基準ともいわれる。