財務分析 第1問 問10 棚卸資産の原価配分に関する問題

棚卸資産の原価配分に関する次の記述のうち、正しくないものはどれですか。

  • 棚卸資産には、販売を目的として保有している財貨または用益だけではなく、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨も含まれる。
  • 棚卸資産の消費量を求めるうえで、継続記録法に定期棚卸法を併用することにより、在庫管理を改善できるだけでなく、適正な期間損益計算を行うことができる。
  • 棚卸資産の単価を求めるための総平均法は、国際的なコンバージェンスのため、適用が認められなくなった。
  • 棚卸資産の評価方法が異なれば、個々の会計期間の売上原価には差異が生じうるが、トータルの期間考えれば売上原価の総額には差異は生じない。
  •    

解答

解答:C

  • 正しい。
  • 正しい。
  • 国際的なコンバージェンスの観点から適用可能な棚卸資産の評価方法から削除されたのは、後入先出法である。
  • 正しい。
  •    


棚卸資産

棚卸資産とは、販売活動をするための商製品、製造活動に必要な原料、仕掛品などを指し、次の4つのグループに分けられる。
①通常の営業過程において販売するために保有する財貨または用役・・・商品や製品(商品とは他社から仕入れた完成品、製品とは自社で生産したもの)。 証券会社が販売目的で保有している有価証券や、不動産会社が販売目的で保有している土地、建物等も棚卸資産となる。
②販売を目的として現に製造中の財貨または用役・・・仕掛品や半製品(仕掛品は製造過程にあるものでその状態では販売できないもの、半製品は製造過程ではあるがその状態で販売可能なもの)。
③販売目的の財貨または用役を生産するために短期間に消費されるべき財貨・・・原材料(製造過程で消費される原材料および購入部品を含む材料で未だ消費されてないもの)。工場で使用される消耗品、消耗工具、器具や備品が含まれる。
④販売活動および一般管理活動において短期間に消費されるべき財貨・・・工場以外で使用される消耗品、消耗工具、器具や備品。つまり、販売活動において使用される荷造用品等が該当する。

棚卸資産の取得原価

棚卸資産の取得原価は支払対価をもとに決定されるが、取得方法によって次のように整理される。
①購入の場合・・・棚卸資産の取得方法としては最も一般的であり、購入代価に引取費用等の付随費用を加算して決定する。
②自社製造の場合・・・自社製造の場合は製造原価をもって取得原価とする。製造原価は、材料費、労務費、経費によって構成される。
まず、原材料のうち、消費された部分が材料費として仕掛品勘定に振替られる。また、工場の従業員の労働に対して消費された部分労務費として仕掛品勘定へ振替えられる。 さらに製造工程で使用される機械装置などの減価償却費等も経費として仕掛品勘定へ振替えられる。

棚卸資産の原価配分-消費量の算出

非貨幣性資産について当期の費用と次期以降の費用とに期間配分する考え方を原価配分という。棚卸資産の取得原価のうち、当期の実現収益である売上高に対応する部分が売上原価として損益計算書に費用計上される。 一方、当期において販売されなかった残存分は、棚卸資産として貸借対照表に計上される。
売上原価となる部分は、消費量(払出量)×単価によって算出されるが、消費量の求め方は下記の2つがある。
①継続記録法・・・商品有高帳等の帳簿を設けて棚卸資産の受入れ、払出しのつど記録を行っていく方法。
②定期棚卸法・・・期首の数量と期中の受入れ数量のみを記録し、これらの合計額から期末に行う実地棚卸数量を差引算出された数量を消費量とする方法。
2つの方法を併用して算出することが望ましい。

棚卸資産の原価配分-単価の算出

単価の算出方法としては下記の5つがある。
①個別法・・・取得原価が異な棚卸資産ごとに区別して記録する方法。
②先入先出法(First-in First-out)・・・先に受け入れた棚卸資産から先に払出していくという仮定のもとに帳簿記録を行う方法。モノの流れに即した考え方。
③後入先出法(Last-in First-out)・・・最近受け入れた棚卸資産を先に払い出すとの仮定の下、帳簿記録を行う方法。会計基準の国際的なコンバージェンスは図る観点から棚卸資産の評価方法から2010年に削除された。
④平均法・・・受け入れた棚卸資産の取得原価を平均して払出し単価を求める方法。
総平均法・・・受け入れた棚卸資産の合計金額をその数量の合計で除して加重平均単価を求める方法。
移動平均法・・・新たに棚卸資産を受け入れるたびに、平均単価を算出し直し、その平均単価によって次の払出し単価を記録する方法。
⑤売価還元原価法・・・異なる種類の商品をひとまとめにして加重平均する方法。