証券分析 第3問 Ⅲ-問5 残余利益とBPSに関する問題

図表1は、A社の1株当たり指標と自己資本を示すものである。投資家の要求収益率は15%で一定、サステイナブル成長率を10%とする。 ROE,配当性向はそれぞれ一定とする。A社は負債を持たず配当支払い以外の資本取引を行わない。配当は期末に支払われる。

図表1 A社の1株当たり指標
第1期第2期第3期
1株あたり利益(EPS)5055問2
1株あたり配当(DPS)3033問2
1株あたり留保利益2022
1株あたり残余利益2022問5
1株あたり期首自己資本(BPS)200220問5

問4までの想定に関わらず、第3期のA社のEPSは60円とする。その他の想定は変わらないとして、第3期のBPS(期首)と1株当たり残余利益はそれぞれいくらですか。

  • BPSは231円、1株当たり残余利益は20.0円。
  • BPSは242円、1株当たり残余利益は22.0円。
  • BPSは242円、1株当たり残余利益は23.7円。
  • BPSは288円、1株当たり残余利益は24.2円。

解答

解答:C

第2期のBPSと残余利益から220+22=242円となる。
残余利益=純利益 - BPS×要求収益率=60 - 242×0.15=60-36.3=23.7円

残余利益モデル

企業のある期の自己資本は前期の自己資本にその期の内部留保額(純利益から配当を引いた金額)を加えた金額になるという 「クリーンサープラス関係」から企業価値を導くモデル
IV0・・・現時点における株式の1株あたり内在価値(理論価格)
Re・・・株主資本コスト
DIVt・・・t期の配当
Bt・・・t期の自己資本
Et・・・t期の純利益

Bt=Bt-1 + (Et - Dt)=前年度自己資本+(今期純利益 - 今期配当額)

残余利益モデルの株式内在価値は下記式で求められる。

 IV0   =   B0 
Σ
t=1
 Et  - kBt-1
 (1+Re)t 
日本語で書くと、
株式の理論価値=自己資本+残余利益モデルの割引現在価値合計
残余利益=純利益 - 期首自己資本×株式の要求収益率

配当性向が一定の場合の残余利益モデル算出式

配当性向が一定の場合、自己資本はサステイナブル成長率gで成長するので、下記式で理論価格が算出できる。
g・・・サステイナブル成長率

IV0 = B0 (ROE - Re)B0
Re - g
上記を日本語で書くと、要求収益率Re×自己資本0は株主が要求する配当のことであるので
理論株価=自己資本+今期残余利益/(要求収益率-サステイナブル成長率)
となる。
サステイナブル成長率=ROE×内部留保率=ROE×(1-配当性向)