証券分析 第3問 Ⅲ-問3 残余利益モデルに関する問題
図表1は、A社の1株当たり指標と自己資本を示すものである。投資家の要求収益率は15%で一定、サステイナブル成長率を10%とする。 ROE,配当性向はそれぞれ一定とする。A社は負債を持たず配当支払い以外の資本取引を行わない。配当は期末に支払われる。
第1期 | 第2期 | 第3期 | |
---|---|---|---|
1株あたり利益(EPS) | 50 | 55 | 問2 |
1株あたり配当(DPS) | 30 | 33 | 問2 |
1株あたり留保利益 | 20 | 22 | ‐ |
1株あたり残余利益 | 20 | 22 | 問5 |
1株あたり期首自己資本(BPS) | 200 | 220 | 問5 |
残余利益モデルに関する次の記述のうち、正しくないものはどれですか。
- 残余利益とは、純利益から期首自己資本に要求期待収益率を掛けたものを差引いた結果である。
- 毎期の残余利益の割引現在価値合計が、株式の理論価値となる。
- クリーンサープラス関係を前提とすれば、今期純利益と今期期首自己資本の和から今期期末自己資本を差引いたものが、今期配当に等しい。
- クリーンサープラス関係を前提とすれば、残余利益モデルは配当利益モデルと整合的なことを示すことができる。
解答
解答:B毎期の残余利益の割引現在価値合計と期首の自己資本の和が株式の理論価値となるため、Bが誤り。
残余利益モデル
企業のある期の自己資本は前期の自己資本にその期の内部留保額(純利益から配当を引いた金額)を加えた金額になるという
「クリーンサープラス関係」から企業価値を導くモデル
IV0・・・現時点における株式の1株あたり内在価値(理論価格)
Re・・・株主資本コスト
DIVt・・・t期の配当
Bt・・・t期の自己資本
Et・・・t期の純利益
Bt=Bt-1 + (Et - Dt)=前年度自己資本+(今期純利益 - 今期配当額)
残余利益モデルの株式内在価値は下記式で求められる。
IV0 | = | B0 | + | ∞ Σ t=1 |
Et - kBt-1 (1+Re)t |
株式の理論価値=自己資本+残余利益モデルの割引現在価値合計
残余利益=純利益 - 期首自己資本×株式の要求収益率
配当性向が一定の場合の残余利益モデル算出式
配当性向が一定の場合、自己資本はサステイナブル成長率gで成長するので、下記式で理論価格が算出できる。g・・・サステイナブル成長率
IV0 = B0 | + | (ROE - Re)B0 Re - g |
理論株価=自己資本+今期残余利益/(要求収益率-サステイナブル成長率)
となる。
サステイナブル成長率=ROE×内部留保率=ROE×(1-配当性向)