証券分析 第3問 Ⅱ-問5 配当政策と理論株価に関する問題

図表1は、X社、Y社、Z社に関する配当落ち直後のデータである。3社とも有利子負債はなく、発行済株式数は1億株である。 配当はサステイナブル成長率で永続的に成長すると仮定する。株式の均衡期待収益率(株主の要求期待収益率)は、CAPMに 従って形成される。リスクフリー・レートは2%、マーケット・リスクプレミアムは5%である。理論株価の算出には配当割引モデル を用いる。

図表1 X社、Y社、Z社の配当落ち直後のデータ
X社Y社Z社
自己資本簿価(億円)1,0001,0001,000
ROE10%10%10%
サステイナブル成長率ゼロ4%☆注2
均衡期待収益率10%☆注110%
☆は設問の関係で数字が伏せてある。注1は問3と問4、注2は問5に関係する。

Z社の配当政策と理論株価について正しいものはどれですか。

  • 配当政策を高めると株価は上昇する。
  • 配当性向を高めると株価は下落する。
  • 配当性向を高めても株価は変化しない。
  • 配当性向と株価の関係は一概にはいえない。

解答

解答:C

理論株価と配当性向の関係は下記式で表せられる。
理論株価=配当額/(期待収益率-サステイナブル成長率)=配当性向×当期純利益/(期待収益率 - ROE×(1-配当性向))
本題では期待収益率とROEが同一の値であるから、上記式にあてはめると、理論株価=配当性向×当期純利益/ROE×配当性向=当期純利益/ROE
となるり、配当性向が株価に影響しないことがわかる。

サステイナブル成長率モデル

毎期の配当が一定率で成長するモデル
IV0・・・現時点における株式の1株あたり内在価値(理論価格)
Re・・・株主資本コスト
DIV1・・・1期間末に支払われる1株当たり配当
g・・・サステイナブル成長率

IV0=DIV1/(Re - g)
サステイナブル成長率=ROE×内部留保率=ROE×(1-配当性向)