証券分析 第3問 Ⅱ-問4 PBRに関する問題

図表1は、X社、Y社、Z社に関する配当落ち直後のデータである。3社とも有利子負債はなく、発行済株式数は1億株である。 配当はサステイナブル成長率で永続的に成長すると仮定する。株式の均衡期待収益率(株主の要求期待収益率)は、CAPMに 従って形成される。リスクフリー・レートは2%、マーケット・リスクプレミアムは5%である。理論株価の算出には配当割引モデル を用いる。

図表1 X社、Y社、Z社の配当落ち直後のデータ
X社Y社Z社
自己資本簿価(億円)1,0001,0001,000
ROE10%10%10%
サステイナブル成長率ゼロ4%☆注2
均衡期待収益率10%☆注110%
☆は設問の関係で数字が伏せてある。注1は問3と問4、注2は問5に関係する。

Y社株式の均衡期待収益率が12%のとき、Y社のPBRについて正しいものはどれですか。

  • 1倍を下回る。
  • 1倍に等しい。
  • 1倍を上回る。
  • PBRについては一概にはいえない。

解答

解答:B

問3と同様に理論株価を算出してみる。問3の最後の式の期待収益率が0.04→0.12になっただけ。
サステイナブル成長率の算出式を用いる。今回のY社の配当額を求める。
今期の当期純利益はROEが10%、自己資本が1000億円なので、1000億円×10%=100億円となる。
サステイナブル成長率が4%、ROEが10%であるから、配当性向は4%=10%×(1-配当性向)より、 配当性向=1-0.4=0.6=60%となり、配当額は60億円と求まる。
よって、理論株価は60/(0.12-0.04)=750となる。
PBR(Price Book-Value Ratio:株価純資産倍率)=株価/自己資本で750/1000=0.75となり1倍を下回る。

サステイナブル成長率モデル

毎期の配当が一定率で成長するモデル
IV0・・・現時点における株式の1株あたり内在価値(理論価格)
Re・・・株主資本コスト
DIV1・・・1期間末に支払われる1株当たり配当
g・・・サステイナブル成長率

IV0=DIV1/(Re - g)
サステイナブル成長率=ROE×内部留保率=ROE×(1-配当性向)