証券分析 第3問 Ⅰ-問2 配当割引モデルによる理論価格に関する問題

2012年度末時点で、X社は2013年度と2014年度に無配とするが、2015年度末に1株当たり5円の配当を行い、その後は毎年5%ずつ増配していく予定である。 X社に対する株主の要求収益率が10%で一定とすると、現時点(2012年度末)で配当割引モデルによる理論株価はいくらですか。

  • 50円
  • 75円
  • 83円
  • 91円
  • 100円

解答

解答:C

まず2014年度末時点の理論株価(その時点の現在価値)を求める。
X社は配当の成長率gが5%と一定の成長率となり、当初の配当DIV1が5円、株主資本コストが10% であるので、5/(0.1-0.05)=100よって100円となる。
2013年、2014年は無配であるため、2年分の株主資本コストで割引けば2012年度末時点の理論株価が算出できる。
よって、100/(1+0.1)2=82.64≒83円

配当割引モデル(DDM)

株主にとっての企業価値は株主が将来受取る配当の現在価値の総和に等しいという考えに基づいて企業の価値を算出する考え方。

DIV1・・・1期間末に支払われる1株当たり配当
P1・・・1期間末に該当株式を売却して得られる収入
IV0・・・現時点における株式の1株あたり内在価値
Re・・・株主資本コスト

※株主がその株式に投資することによって獲得することを期待する収益率
上記と仮定した場合、下記(1)式により現時点における株式の1株あたり内在価値(IV0)が表される。

IV0=(DIV1 / 1+Re)+(P1/1+Re) ・・・(1)
P1は1期間末時点における当株式の価値であるが、この時点で当株式を購入する投資家にとっての価値と同等なので、P1 は2期間末に支払われる配当(DIV2)と2期間末に株式を売却することによって得られる収入(P2)により下記のとおり表される。
P1=(DIV2/1+Re) + (P2/1+Re) ・・・(2)
このP1を式(1)に代入すると
IV0=(DIV1/1+Re) + (DIV2/(1+Re)2) + (P2/(1+Re)2) ・・・(3)
同様の作業を繰り返すことで、

 IV0   =   DIV1 
 1+Re 
 DIV2 
 (1+Re)2 
 DIV3 
 (1+Re)3 
・・・  = 
Σ
n=1
 DIVn 
 (1+Re)n 
・・・(4)
ただし、遠い将来の株価の現在価値  P 
 (1+Re) 
はゼロに収束すると仮定する。
上記の式(4)が意味するところは、株主にとっての企業価値は株主が将来受取る配当の現在価値の総和に等しいということ であり、これが配当割引モデル(Dividend Discount Model:DDM)である。


ターミナルバリュー

事業や企業の生み出す将来のキャッシュフローを試算してその価値を計算する際に、個別にキャッシュフローの試算が できない期間(例えば5年目以降)以降について算定された永続価値のこと。

ゼロ成長率モデル

毎期の配当額を一定額と仮定するモデル。
IV0 = DIV1/Re

サステイナブル成長モデル

配当の成長率を一定とするモデル。
g・・・配当の成長率(一定)

IV0 = DIV1/(Re - g)